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飛行機に関わる話題

  目次

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1. プロローグ

飛行機が大好きです。「空気のような・」とも表現され掴めない空気という媒体を利用して空を飛べるようになった、人間の「工夫する力」の素晴らしさを感じるからでしょう。生前の母親から聞いたのは「赤ん坊のころ(戦時中でしたが)防空壕にいても飛行機の音がすると「見る・・」と外に出たがって困った」そうで、その頃からの心もあるようです。

飛行機が飛ぶには大きなエネルギーが必要なのは日常生活で階段を上るときに実感されます。地球の重力に抗しながら大気中を飛び回り、更には機首を上げてそのまま上空へ視界没となる高性能機(戦闘機ですが)が現在は当たり前になりました。人類がそのような能力を獲得したのを素晴らしいと思います。宇宙に達するロケットの打ち上げ光景も素晴らしいでしょうが、やはり機動力の多彩さという面で飛行機の技術的発展に、より感銘を受けます。ここでは、飛行機に関わる記憶や思うことを述べています。

2. 人生最初の飛行機に関する記憶

小学一年生の頃(1948年?)、田舎の小さな町にある映画館に一年に一度だけニュース映画を見に連れて行ってもらうのが楽しみでした。これが唯一の外の世界を見られる機会で、そこでの記憶が2件だけ残ってます。
一つはアメリカの野球の試合、数年前のすり切れたフイルムの上映でしょうから試合の勝負は論外ですが、今で言うファインプレーに周囲の大人たちが歓声を上げ拍手をしていたことです。

Meter Panel image

もう一つが飛行中の大型機の操縦室を撮影したもの、壁面全体に(アナログ針の)メーターが連なる今で言う計器パネルがあり、担当者(多分航空機関士)がパネルに並んだ無数のスナップスイッチを、バチ、バチ、バチと次々に操作していた場面です。そのことが頭から離れず、飛行機はそのように無数のスイッチを操作することで飛ばす(操縦する)と思い込んでいて、操縦装置(操縦桿など)を操作して飛ばすと漫画で知ったのはずっと後のこと。
何も情報が無いという環境は大変不幸な状況であると痛感します。

3.飛んでもない飛行機の説明

終戦後は日本に駐屯する米軍を進駐軍と呼びました。ある日汚れた足を洗って貰っていたとき、低い高度で一機のジェット機が飛び去った。その轟音で、父が進駐軍のジェット機は・・と話を始め「ジェット機は風船のようにエンジンを膨らませてガスを吹き出し、その反動で飛ぶ(今で言う風船ロケットですね)。日本ではその膨らます金属が採れないからジェット機が造れなかった・・」主旨はこんなでした。

jetplane picture

子供は親の言葉を疑いません、でも「風船を膨らますのなら、どうしてジェット機は続けて飛べるのだろう?」これが人生初めての真剣な疑問でした。だいぶ後でターボジェットエンジンの作動原理を知り、とんでもない説明だったことに驚いたのを記憶してます。しかし、この経過は良い想い出として今でも残っています。ターボジェットエンジンは項を改めて採りあげます。
少し前に、新聞で面白い記事を見付けました。飛行中の客席の窓から外を眺めていたお嬢ちゃんが「どうして羽(主翼)の先が動いているの・・」お母さん「鳥さんが飛ぶときに羽(翼)を動かすでしょう、同じよ・・・」これも冗談か、本気だったのか分かりませんが、もし記憶に残っていれば後日には楽しい想い出になるでしょうね

飛行機の主翼は飛行中の応力よって変形しない高い剛性「ガッチリさ」を持たせるのが基本ですが、大型化が進むと重量が増す問題が生じます。ボーイング(Boeing)B47爆撃機1947年初飛行 (図3-2)は、長距離飛行性能を得るための細長いスマートな主翼に高速性能のため強い後退角を設けたのですが、見るからに「ガッチリ化」は難しそうです。そこで、撓むことを許す設計でより軽量な最初の可撓翼 (かとうよく)となりました。(世界航空機年鑑 1956年) この主翼では飛行中の操縦による変形(捻じれ)を抑えるためにフライトスポイラーという操縦舵面が新たに導入されましたが、これは別項でとりあげます。

B47 external-view B47 wing-twist view

ここでこの翼の性質を知る実験です。厚紙で後退角翼の形に切り抜き、上に曲げると先端が下側に向かって捩れます。なぜでしょう、翼の任意の位置で飛行方向に平行な一本の線を想定します。この部分は内側の部分で支えられ、後側を支える部分は前側と比べて常に小さくなります(図3-3)。全体の強度が均一なら大きな力を負担する後縁で変形が大きくなり、上側に力が掛かると先端が下向きに捻じれます。

次に厚紙の後退翼を飛行方向と平行に、数カ所切断して上面にテープを貼って繋げます。すると翼の先端を持ち上げても捻れることなく上に反ります。現実には主翼は機体重量を支えるので自由に曲がる構造はあり得ませんが、前進方向に直角となる方向だけ、主翼の前側と後側で調節しながら強度を弱めた構造(重量が減ります)にすることで、より軽量な可撓性を持つ翼になることが想像できます。

B47では主翼に重いエンジンを吊り下げ、翼が薄い先端に近い場所に第1/第6エンジンを取り付け、地上ではその重量で下側に撓ります。その時に発生する上向きの捻れ(上と逆の変形)を飛行中には翼が機体重量を支える時の捻れを打ち消すように働く工夫をした最初の航空機となりました。(世界航空機年鑑 1956年)会社勤務時代に客室の窓から見た印象で、可撓性のある主翼を持つ最初の旅客機がBoing707 、当時の対抗機種ダグラスDC-8は高剛性翼の旅客機だったと考えています。 現在では更に高度な構造設計をされた大型旅客機では、このお嬢ちゃんが見たように気象条件によっては飛行中に翼の先端がよく動くのでしょう。

4.パイロットさん、ありがとう

この項は休日の飛行機見物で東京郊外の米軍飛行場に頻繁に出掛けていた高校生当時の話、1955年の頃でしょう。

ダグラスDC3: ある日飛行場近くの田舎道を自転車で走っているとき、近くの平地林の梢から米軍のC47(米空軍呼称)が突然超低空で出現、パイロットの顔は見えませんが操縦室の前面窓がすぐそこに見える距離で、たしかダークオリーブの塗装でした。 すぐ自転車を止め見上げると、近くでは草原(くさはら)の柵に腰掛けた3人の女児が「わーわー」と声を上げて両手を振って挨拶をしていました。

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機体が頭上を通過、反対側の平地林に隠れる直前に翼端がほんの僅かに上下するのを視認、それが何なのか気になっていました。
かなり後日に想像したのは、輸送機の機内の状況で機体を揺らせなかった(翼を振ると横滑りをするので機内ではコップの水が揺れる)。かと言って真上で翼を僅かに動かしても地上からは分からない、そこで次の平地林に隠れる直前に、機体が後ろから見える位置を見計らって翼を僅かに振ってくれたのだろう。分かったとき、有り難うと心の中で呟きました。

ボーイング377:大型輸送機が離着陸する飛行場でのこと。ここの滑走路は多分あまり長くはなく、緊急事態なのか 当時の最新鋭ジェット戦闘機F86D が滑走路端の近くにある低い木柵に、ランディングギアー主脚の車輪をかすめるように超低空で侵入し着陸するのを見ています。

私がいたのは滑走路に隣接する空き地、周囲には誰もおらず一人で着陸進入してくる輸送機を眺めていました。そこは滑走の中心線上で、滑走路端と飛行場内の狭い道路を挟んで立つ低い柵のすぐ近く。着陸灯を付けて4発の大型輸送機C97(米空軍呼称)が降下進入してきた。その機体はなぜか大きく左に寄ったコース(私から見ると右側)、いつもより高いかなと思う高度。目の前で突然右に傾き大きく横滑り(サイドスリップ) を開始、右に滑りながら少し離れた位置を通過、振り返ると滑走路の位置で素早く姿勢を戻し、何事もなかったように頭を上げ、ほぼ普段通りの位置でタイヤから白煙を上げながら接地着陸しました。見事な着陸でした。

C377 picture

その時気がついたのは、自分がしていた、大変な迷惑行為。
この輸送機のパイロットは、大型輸送機を操縦のルーチンにない(と思いますが) 激しい横滑りをさせて、私の頭上間近をかすめる危険を避けてくれていたのです。当時のグライダーが着陸時の余剰高度の処理に機体を横滑りさせて降下するのを知っていたので瞬時に理解し、同時に飛行機もまっすぐ飛ぶだけではないのだ・・と知った瞬間でした。

ちなみに、客室の右側窓から地上を見る立場で想像してみます。高度が下がり「やっと着陸」とほっとする頃、機体が突然右にグラッと傾き落下。目の前の地面には滑走路はなく、やがて少し離れた先に・・そのまま滑走路に達すると急激に左に傾き(ロールして)姿勢を水平に戻し、同時に機首を上げてどんと接地、、、まあ、普通の感覚とは大分異なります。本当に迷惑をかけてしまいました。

のちに考えると非常に幸運だった要素がありました。この機体はBoeingB29爆撃機を改良して胴体を2階建てにした構造で胴部側面には横滑りで空気抵抗を掛けやすい大きな平面要素があり、安心して強いサイドスリップ で急速に降下できたことが考えられます。もし通常の丸胴型の飛行機ではどうなっていたか、、ラッキーでした。

あのとき思ったのは、当時は一番恐ろしかった米軍のMP(MilitaryPolice)がジープに乗ってすっ飛んでくるのでは・・と怖くなったこと。でも何事も起こらず、多分パイロットが管制塔に報告しないでくれたのでしょう。この見事な操縦は機長だったと思いますが、今でもお詫びと感謝の気持ちでいっぱいです。

サイドスリップ「横滑り」:飛行機は通常は空気を正面から受けるように飛行します。ここではこの空気の流れを「風」としますが、サイドスリップすると斜め前方に進むので、風の一部を空気抵抗が大きくなる胴体側面で受けることになりブレーキの力が発生します。

飛行機の性質として機首を下げ降下すると、坂を降る車と同様に速度が増加し、やがて設計された限度を超えると機体が破損します。サイドスリップはこの時にブレーキとなります。新しい飛行機ではブレーキ装置(別項を予定)を備えていますが、昔の飛行機ではこれが大変有効な方法でした。プロペラ式の戦闘機による展示飛行で高度を下げるときに、旋回しながらこのブレーキを利用するのを見ます。上のC97では補助翼を使って左に傾け、方向舵を右に使った状態で横滑りの姿勢を保つています

コンベアーF102:
東京の西方郊外の長大な滑走路を持つ当時の最新鋭ジェット戦闘機が離着陸する飛行場で、その滑走路北端の脇に少し離れてある小さな塚。ここが絶好の観察ポイントでしたが地面の起伏で滑走路自体は近くの一部しか見えません。

ある日、接近するエンジンの轟音でジェット機が離陸滑走してくるのが分かりました。突然目の前に現れたのは滑走路上を超低空で突進してくる、脚を引っ込めた最新鋭の3角翼戦闘機F102。目の前に来たとき主翼後縁のエレボン が「グイ」と上げ舵を取り、機首を上げ上昇を開始(図4-3)、アフターバーナーの火炎をはきながら30度位の角度で一直線に上昇していきました。

私に披露してくれたようなズーム飛行ですが、この時に驚く経験をしました。
機首を上げた機体が上昇しないで一瞬逆に沈み込むように見え、さらにその動きがスローモーションになり、一瞬停止したようにも見えました。なぜだろう・・胸にしまうことになりました。

F102 takeoff image elevator+aileron picture

エレボン:無尾翼機では主翼後縁の操縦舵面に、補助翼(aileron)と通常は水平尾翼にある昇降舵(Elevator)の機能を持たせるので、Elevator+Airelon=Elevon と呼ばれます。(図4-4)

何年もの後に三角翼の性能の特徴を偶然に知って納得したのは:
〇 急激に上昇を開始すると運動の加速度(通称G)が掛かり、これに打ち勝つ揚力が必要。3角翼は翼の特性で迎え角を大きくしないと揚力が増加しないので、機首が大きく上を向く現象が発生します。これを知らずに直ちに上昇すると期待していたので「逆に一瞬沈むように見えた」と言うことです。これ以降「運動をすると加速度が発生する」事実が体に染みつきました。

〇 スローモーションや一瞬停止するように見えたのは、自身の心の働きと知ったのですが、これは別項で取り上げます。

ところで、今では旅客機でも離陸時にこの程度の鋭い上昇を見せることがありますが、当時は離陸後は少し水平飛行で加速した後に緩い角度で上昇に移るのが普通でした。自身の記憶への疑問も有りましたが、最近のTVの画面で偶然見た羽田空港の古い映像資料でDC8がこの方法で離陸していく光景があり、間違いではないのが確認できました。

wing characteristics image

主翼の性能や飛行時の性質を表す数値として揚力係数(CL)があります。これをグラフ(図4-5)にすると、主翼が気流に対して取る迎え角を増していくとCL(揚力と同じ:下記参照)が増加しますが、迎え角がある角度を超えると揚力を急速に失うことを示します。これは主翼上面を流れる気流が翼から剥がれる為で、これを失速と呼びます。(図は説明の為に作成)

失速という言葉は「経済の失速」など広く使われますが、飛行機の「失速」は飛行速度を失うことではなく、翼の上面を後方に向かって走る気流の速度が失われることです。

三角翼は迎え角を増しても揚力係数の増加は小さいが、大きな迎え角でも揚力を発生して失速の発生も緩やかです。これは強い後退角を持つ三角翼の前縁から流れ込む気流で上面の気流の剥がれが抑えられるためですが、揚力係数は低く、翼に発生する抗力(空気抵抗)は大きくなる特性があります。

私が見た三角翼の挙動をグラフ上で見てみます。三角翼(A)の CL のある点(a1)を基準にとり、2Gの加速度に対抗するために2倍の揚力が必要と仮定します(実際はもっと大きかったはず)。揚力の式(下記)から、CLを2倍にするための点(a2)を求めると、迎え角が増加するのが分かります(Kaで表示)。同様に通常翼(B)で同じく2倍のCLを得るための迎え角の増加は Kb で示されます。比較すると「Ka」が「Kb」より遙かに大きくなるのが分かります。これが3角翼で迎え角が大きくなる理由です。なお、説明のために設定した、ある点「a1」と「b1」は飛行速度に依存し、この2点を比較することは意味がありません。

翼の揚力の公式は「揚力=1/2×揚力係数(CL)×空気密度×面積×速度2」ですので、CLが小さくとも速度を上げると大きな揚力が発生するのが分かります。強力なエンジンで抗力の増加に対抗できれば、高速飛行時に強大な揚力を得て素早い動きができる飛行機(戦闘機)が誕生します。航空ショーの機動飛行で戦闘機がアフターバーナー(再燃焼装置)を使うのは、この抗力の増加に対抗している姿です。

一般論として主翼の平面形状による性能や性質の違いがあります。点線は抗力(空気抵抗)が発生する様子を示す抗力係数(Cd)と呼ばれるもので、揚力と同様に抗力は抗力係数を使って計算されます。通常型でも、翼が細長いものほど発生する揚力に比較して抗力が小さくなり、少ない燃料で遠距離を飛ぶ性能に優れます。

5.航空ショーで驚きの経験

私の飛行機好きへの道を後押した経験談です。
1970年、会社の出張でベルギーを訪れているとき、私が飛行好きと知った現地駐在員の方が「休日に航空ショウが開催されるが・・」と誘ってくれ、むろん喜んで同行させていただいた。たしか「ブルージュ?」の基地か空港。初めての海外の航空ショーで、機体展示や展示飛行などいろいろあったと思うが、さすがに記憶に残っていません。

しかし、その中で現在でも記憶に残るのが当時の最新鋭戦闘機 F4(ファントム)と三角翼戦闘機ミラージュの展示飛行で、これからも永遠に忘れそうもないこの2件の記憶を振り返ります。

F4(ファントム)
3時方向から緩降下で会場前の滑走路上の低空に緩降下で高速進入してきました。2名のパイロットのヘルメットがよく分かる低空、ちょうど目の前の位置で急速上昇(ズームアップ)。その時まで無音に近い印象で、高速だと音の到達が遅れたのです。衝撃波は聞こえた記憶は無いので、音速の少し下、最良の機動飛行能力が発揮できる速度だったのでしょう。それほどキツくないカーブで垂直上昇に移った、これも緩すぎると印象に残らなず無駄な速度の低下を生じる、強すぎると強Gで主翼の抗力が増して速度が落ちる、、温度、気圧などの条件を考慮計算された最良の速度が選択されていたはずです。

垂直上昇に移った機体はアフターバーナー全開で轟音を轟かせながら上空の頂点に向かって突進。go, go-up and high の光景、それまでに見たことがない長時間(秒単位とは思いますが)の垂直上昇が続き、やがて私の視力では青空の中に没視界となりました。少しして、点状にキラリと光る機体が見え、姿勢を反転したのが分かり、機体はそのまま会場を去ったようでした。

地球の重力を振り切って、視界没の垂直上昇を初めて見たこの時の驚きを忘れることが出来ません。私が飛行機の性能・能力という分野に強く惹かれるようになったのはこの経験も要因のひとつです。その後は何度か国内の航空ショーに出掛けましたが、このような胸の空くような垂直上昇飛行は見ることは在りませんでした。これには、後日談がありますが、別項で。

ミラージュ(どのタイプかは不明ですが純粋な三角翼戦闘機)
F4より少し高い高度で同様に会場に進入、目の前の位置で引き起こして上昇に入った。今度は非常に緩い引き起こしで、見ていると宙返り飛行に入る様子。極く緩い引き起こしを続け垂直位置を過ぎ、上空に垂直の円を描きながら、ほぼ真上に見る頂点に達しました。三角翼の形状がなんとか確認でき、推定2000mから2500mの高度で上空に点在する雲の上だったような記憶があります。

そのまま背面で残りの半円を描きながら降下、垂直位置をすぎて緩い引き起こし続け、演技開始時に近い高度で水平飛行に戻って会場から去って行きました。見事な「大きな 円」でした。この当時は発煙装置を装着していないので、頭の中で判定する時代でしたが。(下図はこの限界的な飛行の様子をイメージするためのイラストで、機体の縮尺は異なります)

mirrage loop-flight image

推定で地上100m位の低空から、2000m以上の高度を頂点として描く驚異的な宙返り飛行です。パイロットの感覚だけでこのような飛行が可能とは思えず、ではどうやってと考えました。

事前に計算されたコースに添って繰り返したテスト結果のデータを、当日の気温と大気圧、風向きを考慮しながら、機首の角度と方位の姿勢チェック、高度と速度のチェック、上昇下降率の確認し、必要な舵の修正、エンジン出力を調節し、エンジン計器で正常な作動をモニターしながら、外界の確認が必要でしょう。これらを変化するGに耐え耳の圧力抜きをしながら、常に繰り返す飛行と想像します。

方位の変化:垂直方向の円運動で作動中のジェットエンジンに発生するジャイロ効果の力が機首を横方向に振ろうとする力になり、対気速度が減少し抑える力が低下する頂点付近で現れるものです。「F104の場合は放置すると30-40度の右への機首ブレを生じる」(「飛行の話」加藤寛一郎 技報堂出版・1986年(初版)そうで、胴部が細長いF104とミラージュではどの程度の差異が生じるかは分かりませんが、考慮せねばならない要素でしょう。

背面姿勢から地面に向かって降下するのは大変な恐怖感があると聞きます。ましてや、比較的低い高度、地上すれすれの引き起こしとなると、次元が違う恐怖の世界でしょう、しかし恐怖に支配されるようでは正常な状況判断に影響を与えます。また搭乗機体への絶対的な信頼感があってのことでしょうね。
このように考えると、当然優秀な一部のパイロットが行う演技ですが、その体力・気力を含む能力のすごさは私の憧れになりました。

追記:一部の最新型戦闘機ではジェットエンジンの排気ガスの噴出方向を制御して、機体の姿勢を力ずくで変える能力が加わっていて、より強力な推進力とあいまって、限界的な飛行時には姿勢制御に大きな余裕度を持つと考えられます。一方で50年前の飛行機では、飛行中の姿勢制御は操縦舵面に発生する空力的な力のみに頼るので、より綿密な計画と実行が必要だったでしょう。

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